「火入」と「聞香炉(ききごうろ)」、そして「香炉」  ※主に陶磁器の物についてまとめています
 先般、火入の灰を作る講習会の手伝いをした際勉強不足というかほとんどやってないことを反省した次第で、早速ネットで道具を注文。
 まず、同じような物だが用途が違うので道具の整理から。
 香のたき方には「聞香(もんこう)」と「空薫(そらだき)」がある。空薫は香炉でする。

1.主な用途 -------------------------
 (1)火 入   茶事の場合に寄付き・外待合(腰掛)・薄茶席の三か所で煙草盆を用意するが、灰吹きと共に用意するのが火入れ。
    本来寄付き以外は煙管・莨も用意するのだが時代の流れで省くことが多い。聞香炉より一回り大きく形も様々。向付・湯呑等を見立で使用することも。
 (2)聞香炉  香を聞くための香炉。手にもって聞くため直径8cm、高さ7cm前後の物が多い。基本三本足、香炭団(たどん)を使用する。
    煙返しがなく一重口であれば見立てで使用できる。
    ※「ききごうろ」と読むのが正解なのだが、聞香は「もんこう」と読むので「もんこうろ」とふりがなをふっているHPもある。かくいう私も「もんこうろ」と読んでいた。
 (3)香 炉  主に仏前で香を焚くために使う仏具。線香、焼香用に使用する。ほやのある香炉はほやを脇に置いて使う。
     茶席を清めるために使っていたとのネット情報はあるが未確認。現在は炭手前時に香を焚くので香合がメインとなり香炉の出番は無くなったか。
     利休所持と伝わる 「井戸香炉 銘此世」 がある。塩笥形(しおげ)の小壷で、寒い日に交換したのはこの香炉か(※注01)。
     ライターで着火できる香炉用の炭(香炭:みやこ炭等)を使う。灰は 珪藻土灰、藁灰、籾灰、藤灰 があるとのネット情報。

      ※注01 文献によると「千烏の香炉」となっているが袖に入れておくには「此世」の方が相応しいのではと思う次第で。
           文化遺産オンラインより 千烏の香炉 H6.4、口径9.1、此世 H7.5、底径5.0
2.香    -------------------------
2-1 香の種類
  店により呼び方の違いがあるが大体次のようになる
  ①型物 線香(スティック)、渦巻(コイル)、円錐(コーン)、印香
  ②粉物 抹香、焼香、塗香(ずこう)
  ③練香 茶道では炉の時期に使用する
  ④香木 大きなものから 角割(歩割)、小割、細割、刻 となる。通常、聞香・空薫で使用するのはこれ。
2-2 香木の種類
  ①白檀 ビャクダン科、別名サンダルウッド 被子植物で半寄生の性質を持つ
  ②沈香 ジンチョウゲ科、別名アガーウッド 傷を治すための樹脂が変質、比重が重く水に沈むことから
  ③伽羅 最高級沈香の名称

3.火 入   -------------------------
3-1.注意事項
 ・陶磁器を使用する。銅器・鉄製は熱くなるのでNG
 ・鮟鱇型火入は外待合(腰掛)で使用する

3-2.使い方
 ・灰は風炉用を使う。染付・白磁等白いものには赤い菱灰を使うが風炉灰と混ぜて色を調整する。
 ・火入と灰を十分温めておく。火入を温めるのに炭団を使えるが、席中に出す場合は火入炭(くぬぎ炭)を使う。火入の大きさにより炭の太さを選ぶ。
 ・筋棒で灰をかき混ぜ空気を含ませてから熾した炭を中央へ置く(×まだ傾けない 〇あらかじめ傾けていたほうが形が崩れない)
  炭は1/2~1/3程度灰に埋める。
 ・炭の角と一直線になるように灰押で押える。なれたら灰押しを使わないで筋棒でかき上げても良い。
  一度筋棒で仮押し、その後傾きを灰押しで調整すると全体が均一な傾きとなる。
 ・羽帚・筆などで灰際を掃除
 ・リズムが一定になるように筋棒で筋を付ける。奇数が良い。筋棒は太さの違う竹串を複数持っておくとよい。
 ・正面を正し(手前にし)炭を傾ける(表右、裏左)  注:三つ足は一本が正面
 ・練習で火入の灰形を作った後、空薫で使用するとよい(香炭を使用)。

 ・参考 山藤宗山 風炉灰の話し 火入灰
  「火箸二本で灰を掻上げる様にして、輪郭を取ってから火箸一本にて、押える様にして筋をいれます。」

3-3.その他
 ・煙草盆との取合せ
  ・釉薬の掛っている火入には塗・一閑張りなど
  ・無釉薬の火入には木地・焼杉など
 ・筋棒と灰押えは竹で自作、または竹串・竹フォークを加工して使用しても良い。
  参考:市販品の寸法  筋棒 16.8×φ0.2、灰押え 17×2.1

4.聞香炉   -------------------------
  茶道で聞香炉を使うのは当初の七事式(花月/且座/廻り炭/廻り花/茶カブキ/一二三/員茶)では且座だけ。その後歴代家元により 香付き花月/三友/仙遊/唱和 と増えてきて茶道か香道かわからなくなるのではと心配している。あまりよそ様の領分に踏み込むのはいかがなものかと。
 下記のように流派により好みがあるが、もっと自由に使ってみてはどうか。
4-1.道具 表と裏では道具組が違う。代表的な道具を上げておく。雷紋で白楽の聞香炉を見たが流派は未確認。

  聞香炉 重香合 香盆
青・雷紋
φ7.6×H7.0
金筋入青楽、女桑の冠せ蓋
□7.6×H8.3
女桑
22.6×37.8×4.0
白・丸楽
φ7.2×H7.0
真塗り、丸形の塗物
φ5.5×H6.8
真塗
22.0×37.6×4.0

4-2.灰と聞筋
 聞香炉用として香炉灰が販売されている。本来木灰・藁灰だが珪藻土灰も増えてきている。
 ・灰を香炉に入れる前に焙烙で空煎りし前回の移り香を飛ばす。灰をかき混ぜるのは火入と同じ。
 ・中心に香炭団をいれる深さ2cm弱の穴をあけ、真っ赤に熱した香炭団を埋め込む。夏は深め、冬は浅めで表面から1cm程度になるように。
 ・聞香炉の中心に向かって灰をかきあげ、灰押しで形を整え、正面から1本聞筋を付ける。香道御家流では真の香炉、行の香炉と二種の箸目を付ける。
 ・灰の中心に香炭団に向け火窓を空ける。

5.火入と聞香炉 いろいろ  -------------------------

火入  
①染付 雨龍
φ10.8×H10.4
②安南手 螭龍
φ11.8×H9.4 
③青磁六角 寶船
φ11.8×H8.8
④黒楽 四方
W11.0×H7.6
⑤今戸焼 鮟鱇型
φ14.8×H12.0 
 
⑥九谷 雲紋
φ11.0×H8.6 
⑦白釉 半七 
φ11.0×H9.0
⑧備前 落葉壷
φ11.5×H8.5 
⑨楽 緑釉
φ12.0×H8.5 
⑩朝日 茶摘籠
□12.0×9.8
兼用    
①古曽部 小綱つなぎ
φ10.4×H10.0 
②瀬戸 瓢型
φ10.5×H10.3 
③織部 案山子絵
φ9.5×H8.6 
   
聞香炉
①白釉(香炉釉)
φ7.5×H7.2 
←底 ②白釉雷紋
φ8.2×H6.2  
③彫三島
φ8.8×H7.7 
④理平焼 梅
φ10.0×H6.1 

 ・火①②  火を扱うので水にかかわる龍を描いている。②は底に穴があり埋めている。植木鉢の見立てか。
 ・火③   灰皿
 ・火⑩   建水だが莨盆との取合せで使用できる。
 ・兼    火入だが手が大きい男性ならば聞香炉で使用できる
 ・聞①   香道では一対で使用する。白釉は楽二代目常慶とされている。裏千家。
 ・聞②③  流派、好み不明
 ・聞④   向付の見立て。高さがないので底が熱くなりそう。

6.香 炉   -------------------------
 ほとんど使用されないためか安価だったので購入した。陶器(日本)の場合、九谷・有田がほとんどで白薩摩も若干見られる。
 香炉の区分を調べたがしっくりするのが無かったので仮にまとめた。大雑把に分けると下記の様になる。
 (1)前香炉(机用香炉、線香炉) : 一般的に蓋(ほや)の無いもの。鼎(かなえ)形、爵(しゃく)形、天竜寺形など。
   火入を前香炉として使用は可能だが逆の場合は大きさが問題となる。
 (2)ほや香炉(穂屋、火舎)   : ほやの付いた香炉。 ※密教法具の火舎(かしゃ)香炉は別物。
 (3)柄香炉           : 柄のついた香炉。鵲尾形(じゃくび)、獅子鎮、瓶鎮、蓮華形の4種に分類される。

6-1 ほや香炉について
 通常、香炉というとほや香炉をさすが形が多岐にわたっている。摘みに獅子、耳に獣、足に狻猊(さんげい)が描かれることも。
 ・胴が直線         : 筒型、臼形
 ・胴が丸みを帯びている   : 寸胴形、瓜形、かぶ形、丸形、たまご形、袴腰
 ・角形           : 井筒形、角
 ・形が名前になっている   : 獅子形、雉形、鴨形、屋形船形
 ・その他          : 三足(耳なし)、三足で双耳(利休形:香炉のほとんどが三足なので双耳香炉のこと)
                 各々長足があるが三足(耳なし)の長足は少ない。
 ・有名な香炉        : 千烏、三足の蛙

6-2 その他
 調べているうち「伏せ香炉」というものがあることがわかった。備前の細工物が多い。湯呑のようなもので香を焚きその上にかぶせて使用する。
鶏籠の伏せ香炉を入手したので上げておく。中子は付属してなかった。

6-3 香炉いろいろ

前香炉       
①青磁長三足5.5寸 ②白磁臼形陰刻5.5寸
③三足三鳥鬲鼎
(れきかなえ)  
 ④青磁 袴腰  ⑤備前 火もらい
φ12.0×H13.0
 ←背面 
ほや香炉  
①九谷筒形 色絵 ②有田臼形 色絵 ③白磁筒形 ←星座
④青磁丸形 七宝火舎  ←鰭足(ひれあし)  ⑤宝船 ← 
三 足
(耳なし)
①有田三足 染付 ②有田三足 ③有田 出雲唐獅子   
双 耳
(利休形)
①白薩摩 狻猊足  ②青磁 菊陽刻   ③九谷 遊鐶付
玉取り獅子、獣耳 
④青華山水五唐子
遊鐶・唐子足 
⑤九谷色絵、玉取り ⑥有田 桜色絵 ⑦八角宝塔
雨龍・狻猊足
その他 
①鶏籠 伏せ香炉   ②青華燭台   

 ・前①②  大型なので使用シーンは限定される。
 ・前③   銅製は見かけるが焼物ではあまり見ない。瀬戸か。
 ・前⑤   中に湯呑を仕込めば使用できる。外待合(腰掛)の火入としても面白い。
 ・他①   中子の代わりに湯呑を使用。
 ・他②   青華(染付)燭台(牡丹唐草、波紋) 燭台としての使用は限定されるが中に湯呑を仕込み香炉として使用。